【tanuki journal】No.13 建築家と作り上げた北欧建築の心地よい空間

北欧家具tanukiにて取り扱う北欧ヴィンテージ家具・雑貨達。今から50~70年前に作られた作品達は今もなお現代の生活を彩り豊かさや温かみを与えてくれます。当店で出会いを果たした家具・雑貨達が暮らしの中でどのように取り入れられているか、お客様宅を訪問・取材し心地よい暮らしのヒントを探る【tanuki journal】。

第十三弾は石黒洋菓子研究所の石黒さんご夫婦宅を訪ねました。洋菓子を生業とされている奥様の仕事場兼ご自宅は北欧にインスピレーションを受けた建築家こだわりの空間。北欧ヴィンテージとの出会いから、お家造りのこだわりまでいろいろ伺いました。


-北欧ヴィンテージ家具はどのようなきっかけで知りましたか?

石黒さん(旦那様):当時、家を建てる際に建築家の市川さんに内装の相談する段階で、和でもなく洋でもなくちょうどいい感じのナチュラルな雰囲気に合う家具はどうすればよいかを相談した際に、北欧ヴィンテージがよいとおすすめされて北欧家具tanukiさんを紹介されたのがきっかけでした。

石黒さん(奥様):私はお菓子を習いに都内に通っていた頃、教室の周辺に北欧雑貨を扱っていたお店があり、カトラリーなどの雑貨から知りました。家を建てる際は当時はフランスっぽくしたいとも思っていたのですが、最終的に北欧風を目指せばフランス風にもなると行きつき北欧ヴィンテージの家具を探し始めました。

 

-北欧ヴィンテージ家具で気に入ったポイントはありますか?

石黒さん(旦那様):日本家屋にも合う雰囲気や木のぬくもりなどが気に入りましたが、やはりその機能美だと思います。購入したこちらのダイニングテーブルは拡張できますが、伸ばしておいても仕舞っておいてもどちらの状態でも様になるというか、デザインが成立している。面白いギミックがありつつ柔らさもあわせ持った素晴らしいデザインが気に入っています。

ハンス・J・ウェグナーGE290チーク材仕様。右側は市川さんのオリジナルソファ。

イサムノグチのAKARI。

石黒さん(旦那様):実は当時、家の設計図もなにも決まっていない段階で今のダイニングテーブルと照明の購入を決めました。

石黒さん(奥様):当時パリで、天井から三連のライトを吊るしているパティスリーを見て、それにすごく憧れていました。そういった中で北欧家具tanukiさんで偶然出会い一目ぼれで購入しました。市川さんには、こちらのダイニングテーブルと照明ありきで設計を進めてもらいました。

石黒さん(旦那様):その為、照明はダクトレールではなく、シーリングを天井に三つ専用に作ってもらう仕様になっています。

デンマーク製のペンダントライト。

-ダイニングテーブルを使う上で気を付けていることはありますか?

石黒さん(奥様):購入当時に、店長さんがおっしゃっていた「買った家具は使わないともったいない」という言葉を今でも覚えていて、キズやシミなど、あまり気にせずに使うようにしています。ただ、ヴィンテージ家具ということで、お客様の方が食事の際に気を使われてしまう場面があったので、テーブルクロスを掛けたり、お子さんが来るときなどは、あらかじめビニールシートを敷いたりしています。これなら、お互い気兼ねなく使えますし。

石黒さん(旦那様):家具は飾るものでなく本来の用途でしっかり使いたい。木の製品なので傷やシミは気にしてもしょうがないと思います。オイル仕上げの北欧ヴィンテージ家具はメンテナンスは必要だと思いますが、気に入ったものを長く使いたいので、楽しみながら行っています。

購入当時からほぼ変わりないコンディションでご使用いただいているダイニングテーブル。

石黒さん(旦那様):先日参加したオイルメンテナンスのワークショップはとても参考になりました。革製品などのメンテナンスの説明ではよく“クリームは薄く伸ばす”と書いてあるため、ダイニングテーブルでもオイルを薄く伸ばして塗っていましたが、どうしても塗りムラ出てしまい、これでいいのか心配でした。ワークショップに参加して、正しいオイルの量や塗り方を学ばせてもらい、自信を持ってメンテナンスができるようになりました。

バタークリームを使用したオレンジのロールケーキいただきました。ありがとうございました。

現代画家の作品。

-こちらのキャビネットも古いものですか?

石黒さん(奥様):これは私の実家で商売をしていたのですが、その際に使用していた商品棚でした。磨きなおせばとてもよいものになると思い、市川さんに依頼してメンテナンスしていただき、元々2段だったものを二つに分けて脚を付けて並べました。このような古い家具を取り入れることで新築当時でも落ち着く空間になりました。

-家造りのこだわりはありますか?

石黒さん(旦那様):市川さんが関わったお宅を拝見し、市川さんのテイストが気に入って依頼をしました。和でもなく洋でもない雰囲気ということで最終的に北欧風に落ち着きましたが、この天井の段差はアアルトの建築を参考にしていますし、縦長の窓も北欧の建築を参考にしました。ソファスペースは障子を使用して和風ではありますが、四角いフレームを大きくとることで、和のテイストを抑えて明かりを取り入れるようにしました。

石黒さん(奥様):床も市川さんの提案で北欧建築を参考に曲線の仕切りを作りました。床材を曲線にカットし、境目に真鍮をはめ込んでいく難度の高い施工でしたが、市川さんが大工さんを説得してくださり、実現しました。

キッチンの床は防水性のクッションフロア、ダイニングの床はフローリングとなっていて、 一つの空間を、床材を変えることで、用途の区別。
市川さん手作りのテレビ収納を兼ねたサイドボード。

市川さんの奥様で造形作家 丸尾結子さんの作品。
光を取り込めるように作られた市川さんおすすめのスリットが入った引き戸。

市川さんの手作りの手すり。
今後活用を進める予定の敷地内にあるリノベーションされた古い蔵。

造園業を営むお父様が集めていた鬼瓦。

灯篭の脚をリメイクして使用。

ウォールユニットの一部をリメイクして壁に取り付けている。
LOVOTに見つめられながらの取材となりました。かわいい。

-石黒洋菓子研究所ではどのようなことをされていますか?

石黒さん(奥様):『素材が話しかけるフランス菓子』をテーマに、フランス菓子の教室や販売をしています。石黒洋菓子研究所のフランス菓子は、四季折々の美味しさをお届けするために、地元生産者から直接仕入れるいちご・いちじくや、こだわりの自家栽培の梅・あんず・ブルーベリー・レモン・さつまいもなどを使い、素材を活かした地産地消を大切にしています。今年で5年目になりますが、開業が2020年でコロナ禍だったため、焼き菓子のオンライン販売からスタートし、現在は自家焙煎珈琲とのセット販売も加わりました。

一昨年ぐらいから、少人数制でのレッスンを始め、昨年は、夏休みに英会話と簡単なお菓子作りを組み合わせた親子向けワークショップ、秋にはフルート奏者とシャンソン歌手の方をお招きしての音楽会を開催しました。店舗を構えていないので、マルシェ出店などもしています。

今後は、お菓子作りを趣味にしたい方のためのレッスンの充実や、DIY中の蔵とキッチンカーを活用して、フランス菓子と自家焙煎珈琲の予約販売をしていこうと準備を進めています。季節を感じながらフランス菓子を楽しむ豊かなひとときを、石黒洋菓子研究所に集うみなさんと、共有していくことが目標です。

-市川さんはどんな方ですか?

石黒さん(旦那様):市川さんは、壱弍参(ひふみ)建築設計事務所の代表として、東京都府中市を拠点に活動されています。住む人それぞれに心地良い空間を提案できるように心がけて設計に取り組まれています。

我が家の設計をお願いした際も、周辺の風景と自然に馴染む佇まい、そして、その中でどのように居心地の良さを育んでいくかという点を真摯に考え、ご提案くださいました。敷地内には造園業を営む父が手入れをしている庭があるのですが、その庭と新居との調和も大切に設計されており、窓越しに見える木々や、四季折々の花々を楽しみながら生活できる空間となっています。なかでも、毎年3月に見ごろを迎える紅梅は、ダイニングテーブル越しの窓のちょうど中央に位置しており、格別の眺めです。

市川さんとの関係は、家が完成して終わりではありません。暮らしを重ねる中での家との付き合い方について、今でもアドバイスをいただいています。例えば、新居の周りにフェンスを設置しようとした際には、はじめは既製品の導入を考えていたところ、「手作りするのはどうですか?大変ですけど、その分愛着が湧きますよ」と勧めてくださり、設置のレクチャーまでしていただきました。板を磨いてペンキを塗るという作業を繰り返し、約半年ほどかけてフェンスを設置した経験は、住まいに対する思いを深める大切な時間となりました。

敷地内にある古い蔵も、当初は取り壊す予定でしたが、「一度壊してしまったら、このような建物は、もう建てられないですよ」というアドバイスで保存することにしました。現在は、父が蔵の周りの庭造りを行い、私たちが蔵の内部をメンテナンスし、新たな空間として再生させています。

また、市川さんのお住まいは、設計からリフォーム施工まで、実験的にご自身でも手がけられたと伺っています。その理由を伺ったところ、「大工さんはじめ、業者の方と仕事をするときに、より円滑なコミュニュケーションが取れるように」とお話しくださり、まさに建築のお仕事は市川さんにとって天職なのだと、お会いするたびに感じています。


北欧ヴィンテージ家具を中心に据えた豊かな暮らしを垣間見ることができた石黒洋菓子研究所の石黒さんご夫婦宅。和でも洋でもない絶妙なバランスの空間づくりに加え、北欧のデザインが持つナチュラルな温もりと機能美が、暮らしに豊かさを与えることを実感しました。ダイニングテーブルや照明といった家具選びから始まり、設計に反映させた北欧テイストのユニークな工夫は、石黒さんご夫婦の生活を彩り、心地よい空間を創出しています。家具をメンテナンスしながら日常使いすることで生まれる経年変化を受け入れ楽しむ姿勢からは、物と人との豊かな関係性を学ぶことがでるのではないでしょうか。いつも当店のご利用誠にありがとうございます。今後とも引き続きよろしくお願い致します。

 

石黒洋菓子研究所

ホームページ:https://www.ishikurolaboratoire.jp/

インスタグラム:https://www.instagram.com/ishikurolaboratoire/

北欧家具tanuki 北島

【tanuki journal】No.12 直しながら長く使い続ける。旧家から引き継いだ家具と北欧ヴィンテージ家具のある暮らし

北欧家具tanukiにて取り扱う北欧ヴィンテージ家具・雑貨達。今から50~70年前に作られた作品達は今もなお現代の生活を彩り豊かさや温かみを与えてくれます。当店で出会いを果たした家具・雑貨達が暮らしの中でどのように取り入れられているか、お客様宅を訪問・取材し心地よい暮らしのヒントを探る【tanuki journal】。

第十二弾はOさん宅を訪ねました。ご自宅の建て替えを期に北欧ヴィンテージ家具に出会ったOさん。当店でご購入の北欧ヴィンテージ家具と共に、旧家から大切に使ってきた家具をご新居でも使い続ける「もの」を大切にする姿勢は、現代のライフスタイルに示唆を与えるヒントが詰まっていました。


-北欧ヴィンテージ家具はどのように知りましたか?

Oさん:当時ドレッサーを買いたいと思い、いろいろ検索したところどうやら私は北欧家具のデザインが好きなんだということに気が付いて北欧ヴィンテージ家具を知りました。さらに調べたところアルネ・ヴォッダーのドレッサーがとても好みでどうしても欲しくなり、近くにお店がないかなと調べて北欧家具tanukiさんがあることを知り始めて伺いました。その時ドレッサーのついでに何かほかにもかわいいものがないかなと両親とお店に見に行ったら両親がドはまりしました笑

アルネ・ヴォッダーのドレッサー。買付依頼をいただき当店でお探しいたしました。
ミナペルホネンのタンバリン柄のオットマン。

Oさん(お母様):お店に伺った際に見たこのオーレ・ヴァンシャーのソファは一目ぼれでした。自宅の建て替えのタイミングでソファを購入したいと思っていたのですが、革張りのどんと構えるようなソファでなく、ナチュラルな雰囲気で2人掛けくらいのものを探していたところこのソファに出会い、ファブリックの色味や座り心地、木材の雰囲気で購入をほぼ即決しました。それから毎回お店に伺うたびに、あっこれいいねとだんだん北欧ヴィンテージが増えていきました笑

オーレ・ヴァンシャーのセネター2シーター。コンディションがよかったためオリジナルの張地をそのまま使用。
ライティングビューロー。

Oさん(お母様):ダイニングテーブルは私の主人がこの色を気に入って購入を決めました。元々はとても大きなダイニングテーブルを使っていたのですが、普段は4人掛けで使い、孫たちが来たら大きく使える点も気に入りました。

ホルムガードのマンダリン。

-北欧ヴィンテージ家具を実際に使ってみていかがですか?

Oさん:このチェアがとても座り心地が良く気に入っています。以前の家では床に座ることが多かったのですが、今ではこの椅子に座って一日中過ごせるくらい座り心地がよく気に入っています。

Oさん(お母様):本当に座り心地がよくて疲れないですね。ソファも座りやすく気に入っています。

座り心地がとてもよくお気に入りのアルネ・ホフマン・オルセンのチェアとローズウッド材のダイニングテーブル。

Oさん:家具に傷がつくとあっと思ってしまうこともありますが、私はなんでも物を大事にして使いたいと思っていて、tanukiさんは家から近いこともあり、いつでもメンテナンスの相談ができる点にも魅力を感じています。普通の家具は保証がついていることもありますが、直らなかったり物自体を交換というところもある。そうではなく一つのものを長く使いたいと思っているので心強いですし安心感があります。

Oさん(お母様):多少の傷はついてしまってもまあいっかという感じですが、孫が来るときは何かこぼされてソファが汚れないようにカバーをしています。とんでもないギャングだから笑。

Erling Torvitsのネストテーブル。小さいテーブルをソファ前で使用中。

-ご自宅の建て替えのタイミングで家具を購入されたと思いますが、新築にヴィンテージ家具を使うことは特に気にならなかったですか?

Oさん(お母様):全然気にならなかったです。元々古い感じのものが好きなタイプで、北欧ヴィンテージも含めて古いものはしっかりしているので、大事にすれば長く使えますしまた再生できる。造りが安いものだと、壊れやすかったり壊れたら買い替えればいいかなと思ってしまい物を大切にできなくなってしまうと思います。傷が付いたりなにか不具合があっても直しながら大事に使おうと思っています。

張替で余った革を使用した当店オリジナルのコースター。かなりいい味に仕上がっています。

Oさん(お母様):旧家に日本のヴィンテージといえるようなものがたくさんありました。欅の大きな折りたたみテーブルがあって捨てないで直そうかと思っていたのですが重たすぎて手放してしまいました。ほとんどの物は処分してしまいましたが、今思えばインテリアで取っておけばよかったなと思います。そして早くtanukiさんを知っていれば活かせていたかもしれないので古いものは取っておくべきだったかなと思っています。

Oさん:旧家で使っていたボロボロのちゃぶ台や椅子もどうしても新居に持っていきたいと思っていました。どうしたら直るかなと思ってtanukiさんに相談して直してもらいました。十分使えていますし再生してよかったと思っています。tanukiさんで購入したソファやチェアも古いものですが、そういったものを使っていても直してもらえるというのはすごく安心感があります。また、買い替えるつもりはないですが、ヴィンテージ家具は価値が下がらないから買い取ってもらえる点も心強いです。今考えるとあのタイミングで購入できてお買い得でした。

Erling Torvitsのネストテーブル。
カイ・クリスチャンセンのNV31ローズウッド材。からし色のモケット生地との組み合わせがかわいい。
当店でメンテナンスさせていただいた欅のちゃぶ台。

【ちゃぶ台のメンテナンスの様子はこちらから】

Omann Jun社のブックシェルフ。

Oさん:ダイニングチェアは良く座るので座面が擦り切れてきました。時期がきたら今後張替の相談をしにお店に伺いたいと思います。


新築のご自宅に北欧ヴィンテージ家具を取り入れながら、同時に大切にしてきた日本の古い家具も蘇らせて使い続けるOさん親子。『物を大切に使う』という姿勢から、物であふれた現代だからこそ、一つの物を長く修理しながら使い続けることで得られる心の豊かさに改めて気づかされました。北欧ヴィンテージであれ、日本の古い家具であれ、丁寧に手入れをしながら長く使い続けることで、愛着が深まり暮らしに温もりを与えてくれる存在になる。そんな心地よい暮らしのヒントをOさん親子の家で感じることができました。いつも当店のご利用誠にありがとうございます。今後とも引き続きよろしくお願い致します。

北欧家具tanuki 北島

三日月型の背もたれが美しい。ハンス・J・ウェグナーのCH-33の魅力。

当店で買い付ける北欧ヴィンテージ家具。1950~70年代のいわゆるデンマークデザインの黄金期にデザインされた家具は今もなお造り続けられているもの、ヴィンテージでしか手に入れられないもの、近年復刻したものなどさまざまありますが、今回紹介するハンス・J・ウェグナーのCH-33は長らく生産が途絶えてたものの2012年に復刻し入手が可能となったモデル。近年容易に手に入れられるようになった反面、ヴィンテージのCH-33の希少価値は以前に増して高まっています。そんなヴィンテージのCH-33の魅力とは?現行品との違いとは?を解説します。


生涯500脚以上の椅子をデザイン、ハンス・J・ウェグナーとは。

ハンス・J・ウェグナー(Hans J Wegner)は1914年デンマークのトゥナーで靴職人の息子として生まれます。13歳の頃から家具職人H.F.スタルバーグの元で家具の修行を始め、17歳で家具職人の資格を取得しました。その後、コペンハーゲン美術工芸学校に入学し家具設計を専攻、卒業する1938年まで多くを学びました。卒業後、デンマークの建築家であるアルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)の事務所に勤務。ヤコブセンが設計したことで有名なオーフス市の市庁舎の設計にも携わり、議会の椅子や婚姻届を受け付ける部屋に置かれるチェアなど、そこに納める家具のデザインも行いました。1943年に独立し自身のデザイン事務所を開設。彼の代表作となるチャイナチェアシリーズの最初となる椅子はこの頃デザインされました。
ハンス・J・ウェグナーは、その後も数多く名作を残し、1951年にルニング賞を受賞、1997年に第8回国際デザイン賞を受賞するなど、数々の実績を残します。他にもデンマーク王立芸術アカデミーの名誉会員や英国王立美術大学から名誉学士号がハンス・J・ウェグナーに贈られています。1995年にはウェグナー美術館がウェグナーの生まれ故郷であるトゥナーに開館します。
生涯500脚以上の椅子をデザインしたと言われるハンス・J・ウェグナー。彼のデザインした作品は当時のデンマーク社会、住環境、経済状況などを反映し時代に即したデザインであると同時に、半世紀以上たってもなお古さを感じない普遍的なデザインが魅力であると言えます。

 

CH-33とは?

CH-33は1957年にハンス・J・ウェグナーとCarl hansen & Sonとの協業により生まれたモデル。”CH”とはメーカー名の”Carl hansen & Son”の頭文字から取っています。CH-33は1957年にデザインされ10年間ほどしか生産されていないため、ヴィンテージ市場での流通数は限られている希少なチェアの一種。そのハンス・J・ウェグナーのCH-33の魅力は下記にまとめられます。

①コンパクトなサイズ感

②末広がりの脚や背もたれのデザイン

③現行品にはないチーク材仕様

④腰の”いいところ”にフィット

⑤テーブル天板に引っ掛けられる(?)

 

①コンパクトなサイズ感

まずはそのサイズ感。サイズは幅55cm奥行47cm高さ72cm座面高44cmとハンス・J・ウェグナーのチェアとしては小ぶりな部類に入り日本人の体格にもぴったりです。デンマーク製の小さ目のチェアをお探しの方や女性にもおすすめの一脚です。

②末広がりの脚や背もたれのデザイン

次にそのデザイン。三日月のような形の横長の背もたれが特徴的で全体のシルエットはどの角度からみても美しく絵になります。背もたれはサイドに突き出ているので肘を少し引っ掛けることが可能で姿勢のバリエーションを増やせます。テーパーの掛かった前後の脚は安定感に寄与しながらスタイリッシュな印象。貫のデザインも特徴的で、どこを切り取ってみてもこだわりのデザインを感じます。

③現行品にはないチーク材仕様

現在生産されているCH-33には存在しないチーク材仕様はヴィンテージでしか手に入れられない希少なタイプ。チーク材ならではの木材の美しさや経年変化の雰囲気はやはり現行品にはない魅力。現行品でラインナップされているオーク材においても、やはり経年変化の風合いは現行品にはありません。

④腰の”いいところ”にフィット

こちらもこのチェアの特長の一つで、座面の背もたれの間隔が比較的狭く、腰の”いいところ”にフィットします。座面に深く腰掛けると姿勢を正してくれるような、腰のちょうど良いところをサポートしてくれるので、腰痛持ちの方にもおすすめ。

⑤テーブル天板に引っ掛けられる(?)

これを意図してデザインされているかどうかは定かではありませんが、背もたれをテーブル天板に引っ掛けることができるので、掃除の時に便利です。天板の高さによっては脚が宙に浮きませんが、高さ71cm以上であれば浮きます。

 

CH-33の現行品とヴィンテージの違いやそれぞれの魅力は?

CH-33の現行品とヴィンテージ、どちらを選ぶか迷いどころですよね。それぞれの魅力は何でしょうか。下記項目ごとに見ていきます。

①材の違い

②価格

③耐久性

 

①材の違い

現行品では【ウォールナット材】【ビーチ材】【オーク材】の3種類が生産されていますが、ヴィンテージでは【チーク材】【チーク材×オーク材】【オーク材】に加え【ペイントもの】が存在したようで、座面がチーク材の突板仕様の希少性の高い仕様も存在しています。このブログを執筆時点で幸運にも4種類のCH-33のストックがあるのでヴィンテージ仕様のCH-33を見比べてみましょう。

①チーク材座面突板仕様

最も希少な仕様の座面がチーク材の突板仕様のタイプ。元々希少なCH-33の中でもさらに希少なタイプで座面の木栓もよいアクセント。軽量で取り回しもしやすいです。

②チーク材仕様

座面は布張りで他のフレームがチーク材の仕様。

③チーク材×オーク材仕様

背もたれはチーク材、他のフレームはオーク材という仕様。バイカラーがかわいいです。

④オーク材仕様

すべてのフレームがオーク材の仕様。ナチュラルな雰囲気が魅力。

②価格

現行品はブログ執筆時点でおおよそ11~15万円、これを考慮しますとヴィンテージ品の方が相場は高くなります。もう作られることがなく市場の流通量も限られるため今後ヴィンテージ品の価格は下がることはないと思われます。

③耐久性

現代の技術で生産された現行品のCH-33の耐久性は当然ヴィンテージ品よりも高いと言えますが、ヴィンテージ品でもしっかりメンテナンスされていれば実用上は問題ありません。とはいえ、ヴィンテージ品は作られてから半世紀以上経過しているので、今後問題なくメンテナンスフリーで使い続けたい点を優先したい場合は現行品を選んでもよいでしょう。

上記で各項目ごとに現行品とヴィンテージ品の違いについて解説しましたが現行品とヴィンテージどちらを選ぶべきかで悩んだら、、、

価格優先で今後もトラブルなく長く使いたいという方→現行品がおすすめ

チーク材仕様を入手したい、経年変化の風合いや手入れをしながら長く使いたいという方→ヴィンテージ品がおすすめ


ハンス・J・ウェグナーのCH-33は、1957年にデザインされ、コンパクトなサイズ感と美しいデザイン性を兼ね備えた名作です。2012年の復刻により現行品として再び入手可能となりましたが、ヴィンテージ品の希少価値は一層高まっています。価格面と耐久性を重視しメンテナンスフリーで長く使いたい方は現行品がおすすめですが、ヴィンテージ品は現行品では手に入らないチーク材仕様や、時を経た独特の風合いを楽しむことができます。チーク材の質感や経年変化を楽しみながら、愛着を持って手入れをしていきたい方には、ヴィンテージ品がぴったりでしょう。どちらを選ぶにしても、デンマークデザインの黄金期を代表する名作として、長く愛用できる一脚となることは間違いありません。

当店ではハンス・J・ウェグナーのCH-33を始め多数の作品を取り扱っています。お探しの商品がございましたらお気軽にお問合せくださいませ。

 

北欧家具tanuki 北島

 

ストックリスト更新しました。

今月入荷分の商品情報をストックリストへ追加しました。

ストックリストの【新着順】を選択すると新入荷順に表示されます。

たくさんのご注文やお問い合わせ、お取り置きなどいただいており更新が追い付ておりません。

在庫ありのものでも売約済みかお取り置きが入っているものもございます。

気になる商品がございましたらご遠慮なくお申し付けくださいませ。

 

北欧家具tanuki 北島

【Workshop stories】リペア職人川中のメンテナンスブログ #3

メンテナンス担当の川中です。今回第3弾となります。最近は暑くなったり肌寒くなったりと身体が追い付きません…。スギ花粉が落ち着いたらと思ったら次はヒノキ花粉が飛んでいますね。皆様、体調にはくれぐれもお気を付けください。

さて、今回はカール・マルムステンのキャビネットの脚の補修です。

 

脚に変な力がかかったのか脚が外れパーチクルボードがぼそぼそになっています。そのまま接着すると強度に不安があるため少し大きめに削り修理していきます。

作業前です。

ルーターで大まかな部分をけずっていきます。

ノミで形を整えました。

埋め込む材は、今回は木目が似ているクルミの無垢材にしました。クルミは適度な硬さと粘りがあるので強度的にも良いです。

段差がないようにしっかり接着します。

色を入れました。

段差なく仕上がりました。

何度も確認しながら、きつすぎずゆるすぎず丁度よい径の穴をあけます。

接着中です。

接着が完了しました!

 

今回はカール・マルムステンのキャビネットの脚のメンテナンスでした。このタージマハルの屋根みたいなコマみたいな形のものが脚です。はじめ見たときはデザイン性とユニークな形にびっくりしました。次回のメンテンスブログも楽しみにしていただけますと嬉しいです。

 

北欧家具tanuki 川中

 

ゴールデンウィーク期間中の営業について

GW期間中の営業は下記の通りです。

4月25日(金)~27日(日) 11~19時 通常営業

4月28日(月) 定休日

4月29日(火) 11~19時 祝日営業

4月30日(水)~5月1日(木) アポイントメント制営業

5月2日(金)~6日(火) 11~19時 祝日営業

5月7日(水) 定休日

5月8日(木) アポイントメント制営業

5月9日(金)~11日(日) 11~19時 通常営業

 

なお、5月12日(月)~15日(木)は休業日となります。

アポイントメント制での営業もいたしませんのでご了承くださいませ。

 

北欧家具tanuki 北島