北欧家具tanukiにて取り扱う北欧ヴィンテージ家具・雑貨達。今から50~70年前に作られた作品達は今もなお現代の生活を彩り豊かさや温かみを与えてくれます。当店で出会いを果たした家具・雑貨達が暮らしの中でどのように取り入れられているか、お客様宅を訪問・取材し心地よい暮らしのヒントを探る【tanuki journal】。
第十三弾は石黒洋菓子研究所の石黒さんご夫婦宅を訪ねました。洋菓子を生業とされている奥様の仕事場兼ご自宅は北欧にインスピレーションを受けた建築家こだわりの空間。北欧ヴィンテージとの出会いから、お家造りのこだわりまでいろいろ伺いました。
-北欧ヴィンテージ家具はどのようなきっかけで知りましたか?
石黒さん(旦那様):当時、家を建てる際に建築家の市川さんに内装の相談する段階で、和でもなく洋でもなくちょうどいい感じのナチュラルな雰囲気に合う家具はどうすればよいかを相談した際に、北欧ヴィンテージがよいとおすすめされて北欧家具tanukiさんを紹介されたのがきっかけでした。
石黒さん(奥様):私はお菓子を習いに都内に通っていた頃、教室の周辺に北欧雑貨を扱っていたお店があり、カトラリーなどの雑貨から知りました。家を建てる際は当時はフランスっぽくしたいとも思っていたのですが、最終的に北欧風を目指せばフランス風にもなると行きつき北欧ヴィンテージの家具を探し始めました。
-北欧ヴィンテージ家具で気に入ったポイントはありますか?
石黒さん(旦那様):日本家屋にも合う雰囲気や木のぬくもりなどが気に入りましたが、やはりその機能美だと思います。購入したこちらのダイニングテーブルは拡張できますが、伸ばしておいても仕舞っておいてもどちらの状態でも様になるというか、デザインが成立している。面白いギミックがありつつ柔らさもあわせ持った素晴らしいデザインが気に入っています。


石黒さん(旦那様):実は当時、家の設計図もなにも決まっていない段階で今のダイニングテーブルと照明の購入を決めました。
石黒さん(奥様):当時パリで、天井から三連のライトを吊るしているパティスリーを見て、それにすごく憧れていました。そういった中で北欧家具tanukiさんで偶然出会い一目ぼれで購入しました。市川さんには、こちらのダイニングテーブルと照明ありきで設計を進めてもらいました。
石黒さん(旦那様):その為、照明はダクトレールではなく、シーリングを天井に三つ専用に作ってもらう仕様になっています。

-ダイニングテーブルを使う上で気を付けていることはありますか?
石黒さん(奥様):購入当時に、店長さんがおっしゃっていた「買った家具は使わないともったいない」という言葉を今でも覚えていて、キズやシミなど、あまり気にせずに使うようにしています。ただ、ヴィンテージ家具ということで、お客様の方が食事の際に気を使われてしまう場面があったので、テーブルクロスを掛けたり、お子さんが来るときなどは、あらかじめビニールシートを敷いたりしています。これなら、お互い気兼ねなく使えますし。
石黒さん(旦那様):家具は飾るものでなく本来の用途でしっかり使いたい。木の製品なので傷やシミは気にしてもしょうがないと思います。オイル仕上げの北欧ヴィンテージ家具はメンテナンスは必要だと思いますが、気に入ったものを長く使いたいので、楽しみながら行っています。

石黒さん(旦那様):先日参加したオイルメンテナンスのワークショップはとても参考になりました。革製品などのメンテナンスの説明ではよく“クリームは薄く伸ばす”と書いてあるため、ダイニングテーブルでもオイルを薄く伸ばして塗っていましたが、どうしても塗りムラ出てしまい、これでいいのか心配でした。ワークショップに参加して、正しいオイルの量や塗り方を学ばせてもらい、自信を持ってメンテナンスができるようになりました。


-こちらのキャビネットも古いものですか?
石黒さん(奥様):これは私の実家で商売をしていたのですが、その際に使用していた商品棚でした。磨きなおせばとてもよいものになると思い、市川さんに依頼してメンテナンスしていただき、元々2段だったものを二つに分けて脚を付けて並べました。このような古い家具を取り入れることで新築当時でも落ち着く空間になりました。
-家造りのこだわりはありますか?
石黒さん(旦那様):市川さんが関わったお宅を拝見し、市川さんのテイストが気に入って依頼をしました。和でもなく洋でもない雰囲気ということで最終的に北欧風に落ち着きましたが、この天井の段差はアアルトの建築を参考にしていますし、縦長の窓も北欧の建築を参考にしました。ソファスペースは障子を使用して和風ではありますが、四角いフレームを大きくとることで、和のテイストを抑えて明かりを取り入れるようにしました。
石黒さん(奥様):床も市川さんの提案で北欧建築を参考に曲線の仕切りを作りました。床材を曲線にカットし、境目に真鍮をはめ込んでいく難度の高い施工でしたが、市川さんが大工さんを説得してくださり、実現しました。










-石黒洋菓子研究所ではどのようなことをされていますか?
石黒さん(奥様):『素材が話しかけるフランス菓子』をテーマに、フランス菓子の教室や販売をしています。石黒洋菓子研究所のフランス菓子は、四季折々の美味しさをお届けするために、地元生産者から直接仕入れるいちご・いちじくや、こだわりの自家栽培の梅・あんず・ブルーベリー・レモン・さつまいもなどを使い、素材を活かした地産地消を大切にしています。今年で5年目になりますが、開業が2020年でコロナ禍だったため、焼き菓子のオンライン販売からスタートし、現在は自家焙煎珈琲とのセット販売も加わりました。
一昨年ぐらいから、少人数制でのレッスンを始め、昨年は、夏休みに英会話と簡単なお菓子作りを組み合わせた親子向けワークショップ、秋にはフルート奏者とシャンソン歌手の方をお招きしての音楽会を開催しました。店舗を構えていないので、マルシェ出店などもしています。
今後は、お菓子作りを趣味にしたい方のためのレッスンの充実や、DIY中の蔵とキッチンカーを活用して、フランス菓子と自家焙煎珈琲の予約販売をしていこうと準備を進めています。季節を感じながらフランス菓子を楽しむ豊かなひとときを、石黒洋菓子研究所に集うみなさんと、共有していくことが目標です。
-市川さんはどんな方ですか?
石黒さん(旦那様):市川さんは、壱弍参(ひふみ)建築設計事務所の代表として、東京都府中市を拠点に活動されています。住む人それぞれに心地良い空間を提案できるように心がけて設計に取り組まれています。
我が家の設計をお願いした際も、周辺の風景と自然に馴染む佇まい、そして、その中でどのように居心地の良さを育んでいくかという点を真摯に考え、ご提案くださいました。敷地内には造園業を営む父が手入れをしている庭があるのですが、その庭と新居との調和も大切に設計されており、窓越しに見える木々や、四季折々の花々を楽しみながら生活できる空間となっています。なかでも、毎年3月に見ごろを迎える紅梅は、ダイニングテーブル越しの窓のちょうど中央に位置しており、格別の眺めです。
市川さんとの関係は、家が完成して終わりではありません。暮らしを重ねる中での家との付き合い方について、今でもアドバイスをいただいています。例えば、新居の周りにフェンスを設置しようとした際には、はじめは既製品の導入を考えていたところ、「手作りするのはどうですか?大変ですけど、その分愛着が湧きますよ」と勧めてくださり、設置のレクチャーまでしていただきました。板を磨いてペンキを塗るという作業を繰り返し、約半年ほどかけてフェンスを設置した経験は、住まいに対する思いを深める大切な時間となりました。
敷地内にある古い蔵も、当初は取り壊す予定でしたが、「一度壊してしまったら、このような建物は、もう建てられないですよ」というアドバイスで保存することにしました。現在は、父が蔵の周りの庭造りを行い、私たちが蔵の内部をメンテナンスし、新たな空間として再生させています。
また、市川さんのお住まいは、設計からリフォーム施工まで、実験的にご自身でも手がけられたと伺っています。その理由を伺ったところ、「大工さんはじめ、業者の方と仕事をするときに、より円滑なコミュニュケーションが取れるように」とお話しくださり、まさに建築のお仕事は市川さんにとって天職なのだと、お会いするたびに感じています。
北欧ヴィンテージ家具を中心に据えた豊かな暮らしを垣間見ることができた石黒洋菓子研究所の石黒さんご夫婦宅。和でも洋でもない絶妙なバランスの空間づくりに加え、北欧のデザインが持つナチュラルな温もりと機能美が、暮らしに豊かさを与えることを実感しました。ダイニングテーブルや照明といった家具選びから始まり、設計に反映させた北欧テイストのユニークな工夫は、石黒さんご夫婦の生活を彩り、心地よい空間を創出しています。家具をメンテナンスしながら日常使いすることで生まれる経年変化を受け入れ楽しむ姿勢からは、物と人との豊かな関係性を学ぶことがでるのではないでしょうか。いつも当店のご利用誠にありがとうございます。今後とも引き続きよろしくお願い致します。
石黒洋菓子研究所
ホームページ:https://www.ishikurolaboratoire.jp/
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北欧家具tanuki 北島