当店ではこれまで家具をご購入のお客様にはメンテナンス用のオイルをお渡しし、定期的なオイルメンテナンスをお勧めしてきましたが、口頭では説明はするものの実践する場がこれまでなかったなと思い今回このような企画をいたしました。当店で仕上げの基本としているオイル仕上げは定期的なメンテナンスが必要です。もちろんオイルメンテナンスをしなくても急激にコンディションが悪化したり、すぐ使えなくなることはないですが、家具をより良い状態を保ちより長く生活を共にしていただきたく今回オイルメンテナンスについてお伝えさせていただきました。
今後もオイルメンテナンスのワークショップは定期的に開催予定です。開催が決まりましたら逐次お知らせいたしますので、ご希望の方はお申込みくださいませ。
■ワークショップの流れ
今回のワークショップは下記の流れで行いました。
①塗装についての基礎知識の解説
②オイルメンテナンスについての解説
③講師によるオイルメンテナンスの実践
④参加者様のお持ち込みの家具にオイルメンテナンスの実施
【①塗装についての基礎知識の解説】
まずはざっくり家具の塗装についての解説をしました。具体的にウレタン塗装、ラッカー塗装、オイル塗装のそれぞれの特長やメリット・デメリットをお話しいたしました。
塗膜の性能だけの観点で見ると、オイル仕上げはウレタン塗装やラッカー塗装に及びません。傷もシミも付きやすいです。また、オイル仕上げで手触りよく仕上げるには、4~5段階に分けてサンディングペーパーで素地を調整する必要があり結構実は手間も掛かります。その代わり、木の質感を残したより自然な風合いに仕上がるため当店ではオイル仕上げをメインとしています。
なるべく買った当時のままのコンディションを維持することを優先したい場合は、ウレタン塗装などはオイル仕上げよりおすすめな仕上げとなります。ただ、部分的な補修ができないのと、どうしても耐用年数があり数十年すると黄変したり、塗装が剥がれてきます。個人の感覚にもよりますが、私個人としてはこれは味の出る経年変化ではなく劣化に近いかと思います。オイル仕上げは傷やシミはつきやすいですが、定期的にオイルを塗って世話を焼いたり面倒見ることで一緒に年を取っていく存在になると思います。これまでのストーリーが刻まれ自分色に雰囲気がでてより味わい深く愛着の沸く相棒になっていくと思います。そんな家具との付き合い方や距離感がよりすてきで豊かな生活に貢献するものと思っています。
【②オイルメンテナンスについての解説】
当店でおすすめしているメンテナンス用オイルのビボスオイルは木の表面に浸透して固まる性質の乾性油です。ただワックス成分も含んでいるため、表面で固まって表面を保護する役割も持っています。
オリーブオイルやサラダ油を家具に塗る方もいらっしゃったりしますが、(先日のデンマーク買付で訪ねた個人宅でもオリーブオイルを塗っていました)乾かない不乾性油なので当店ではお勧めしません。
【③講師によるオイルメンテナンスの実践】
塗装やオイル仕上げについて全般的に解説した後、いよいよオイルメンテナンスの実践です。棚板のサンプルを用いてオイルメンテナンスの手順を解説いたしました。
【④お持ち込みの家具に参加者様に実際にオイルメンテナンス】
実際にお持ち込みの家具にオイルメンテナンスを参加者様に行っていただきました。当日お持ち込みがない方には当店でサンプルをご用意しました。
作業自体はあまり難しいものではないのですが、どのくらいオイルを塗った方がいいのか、どこまで素地調整すればよいのか家具のコンディションによって最適な方法はそれぞれです。
担当が付いて細かい手順や質問にもお答えいたしました。
■末永く北欧ヴィンテージ家具とお付き合いいただくために
当店で扱う北欧ヴィンテージ家具は製造から50~70年経ているものが中心です。現在の工業製品とは異なり、実用的な耐久性などは劣る部分も確かにございます。ただ、デンマークデザインの黄金期の家具達のデザイン性や実用性、チーク材をメインとした材の魅力や価値・美しさ、半世紀を経てもなお古さを感じない普遍的なデザインなど、現代の製品にはない魅力が溢れています。当店ではそんな家具たちを実用的に耐えられるようにするメンテナンスはもちろん、木の質感や手触りといった部分にもこだわりながら仕上げています。ぜひ今後も今回ワークショップで行ったオイルメンテナンスを行うことで、家具とのよりよい関係を築いていっていただければ幸いです。
北欧家具tanuki 北島