【tanuki journal】No.16 “現地取材”築約200年のリノベーション住宅に住むコレクター宅の暮らし

北欧家具tanukiにて取り扱う北欧ヴィンテージ家具・雑貨達。今から50~70年前に作られた作品達は今もなお現代の生活を彩り豊かさや温かみを与えてくれます。当店で出会いを果たした家具・雑貨達が暮らしの中でどのように取り入れられているか、お客様宅を訪問・取材し心地よい暮らしのヒントを探る【tanuki journal】。

第十六弾はデンマーク現地の様子をお届けします。デンマークでの買い付けの日程を終了し、あとは帰国のみという段階で泊まったとある宿。建物や周りの環境もとてもよく辺りを散策しているとホテルのオーナーさんが声を掛けてくれ、話しているうちに隣接するオーナー宅の中を見せてくれることに。全然期待していなかったもののまさかのコレクションに遭遇して急遽取材することになりました。デンマーク恐るべし。

宿と隣接するオーナー宅は1827年に建てられ、水車を利用した製粉所として使われていたそう。1954年にデンマークで最初に保護遺産に指定された水車のひとつとなり、現オーナーが約17年前にこの建物を購入。リノベーションを行い二棟あるうちの片方は宿として、もう片方は自身で住まわれている。


まず二階に上がるとベアチェアが2台お出迎え。全然想定していなかったのでびっくりしました。

ハンス・J・ウェグナーAP19ベアチェア。

このベアチェアですが、お家をリノベーションの為に屋根を外した際に搬入したそうで、階段や窓も小さいため搬出ができないそう。ベストなセキュリティだ(笑)と言っていましたが、、、いいのでしょうかそれで。

ハンス・J・ウェグナーCH-29。

古いダイニングテーブルにハンス・J・ウェグナーのCH-29を合わせて使用。ジャンルは異なれどこういった組み合わせも良いのではないでしょうか。宿のオーナーさんは背もたれがフィットしてお気に入りとおっしゃっていました。当店でもお勧めのチェアのひとつです。

フィン・ユールのチーフティンチェア。

フィン・ユールのチーフティンチェア。ヴィンテージではなく現行品とのことですが、こちらも屋根を壊さないと搬出できないとのこと。

奥に進むと大量のロイヤルコペンハーゲンのコレクション。貴重な作品を拝むことができました。恐れ入りました。

大変貴重なロイヤルコペンハーゲン フローラダニカ。
刻印から1894~1896年頃のものとのこと。

一階に下ります。カントリー調のリビングエリアには所々デンマークデザインの名作が配置されています。

アルネ・ヤコブセンのエッグチェア。

ルイス・ポールセンPH2/1。

奥にもルイス・ポールセンのランプ。

現代のデンマークでは断熱性能が高く部屋を広く取る間取りが多いが、今の住宅性能とは異なる昔の住宅は、寒さ対策で部屋を細かく区切って扉を付けて熱が逃げないようにしていたそう。”現代のデンマークの生活とはだいぶ違うけど、この生活が気に入っているわ”とオーナーさん。

キッチンへ。窓の正面に照明は定番の配置。窓の外の風景も素敵。

窓際のガラス小物は定番。お花もかわいい。

オーナーさんお気に入りのハンス・J・ウェグナーCH-29。

“昔はどこの家にも置いてあったのよ”というコンロを兼ねたストーブ。
夕食時に失礼いたしました。

ハンス・J・ウェグナーAP-29。

デンマークの伝統的な母屋をリノベーションした空間に、デンマークモダンデザイン以前の伝統的なスタイルとモダンデザインを組み合わせた心地よい空間が印象的な取材となりました。現代のデンマークの生活スタイルとは異なるスタイルではあるものの、窓際にガラス小物を置いたり、照明をぐっと控えめにするスタイルはやはりデンマーク。モダンデザインだけでコーディネートするのではく、カントリーやアンティーク調の家具達にデンマークのモダンデザインを取り入れたミックススタイルの参考になる有意義な時間となりました。急遽の取材対応ありがとうございました。

 

北欧家具tanuki 北島

【tanuki journal】No.15 “現地取材”デンマークの古き邸宅で巡る、北欧ヴィンテージとアートが織りなす心地よい暮らしのヒント

北欧家具tanukiにて取り扱う北欧ヴィンテージ家具・雑貨達。今から50~70年前に作られた作品達は今もなお現代の生活を彩り豊かさや温かみを与えてくれます。当店で出会いを果たした家具・雑貨達が暮らしの中でどのように取り入れられているか、お客様宅を訪問・取材し心地よい暮らしのヒントを探る【tanuki journal】。

第十五弾はデンマーク現地の様子をお届けします。お伺いさせていただいたのはフラワーアーティストのKarenさん宅。北欧ヴィンテージから現代作家の作品まで、様々な要素を取り込みながらもまとまりのある生活空間から心地よい生活のヒントをたくさん学んだ取材となりました。

Karen宅は戦前に建てられたもので、戦時下はドイツに接収されたものの終戦後に再びデンマークが奪還し、現在住まわれているKarenさんご一家が3代目の住人として暮らしている。当時は使用人を雇うほどの裕福な一家が建てたとのことで、建物内に使用人が使うための専用の階段や導線、各部屋に呼び出しの為の呼び鈴まで作られていたとのことで所々に歴史を感じる邸宅であった。


まず玄関を抜けるとダイニングエリアへ。広々とした空間にアルネ・ヤコブセンのアーム付きエイトチェアにピート・ハイン、ブルーノ・マテソン、アルネ・ヤコブセン共作のスーパー楕円テーブル。ご自身で塗られたという壁の青と緑が混ざったような絶妙な色合いの壁、赤いチェアとルイス・ポールセンのコントラスト、庭の緑の配色が絶妙でお互いを引き立てているよう。派手な赤色のエイトチェアもコントラストの赤色が入ることで浮かずに空間に調和している。

ラグで覆われて見えないが、このラグの下の床にも使用人を呼び出す呼び鈴のスイッチが残されている。

ルイス・ポールセン社製PHコントラスト ペンダント。

カラフルなラグは床だけでなく壁面でも活躍。色味だけでなくその風合いから暖かみも感じます。

Bjorn Wiinblad(ビヨン・ヴィンブラッド)のポスター。

建てられた当時からのガラス細工。
同じカラーでのコーディネート。

美しい庭は手入れが行き届いている。こちらのお宅も窓にカーテンがなく、外とのつながりを感じやすくなっている。

日向ぼっこ中。
さらに深い眠りへ。
起きて挨拶してくれました。
立体的なアート作品。こういったアートを取り入れるのが本当に素敵。

リビングから玄関方面へ。

カイ・クリスチャンセンのチェストとミラー。
招き猫のラグ。ショッキングピンクで塗られたヒーターもアート作品に見えてきます。

少し見えにくいですが、丸い窓が素敵。

再びお部屋に戻りキッチンへお邪魔します。このキッチンは元々使用人しか使わない設計で仕切りの壁があったが取り壊してリノベーションをしたそうです。

キッチンの窓辺に照明を吊るすのがデンマーク流。外から見た時にちょうど美しく見える位置に配置されている。

ヴァーナー・パントンのフラワーポット ペンダントライト。

呼び出しのスイッチが押されるとここに部屋番号が表示される。

ダイニングエリアを抜けてリビングエリアへ。ご自身で塗られたという青い壁が印象的。

フラワーアーティストのKarenさんご自身の作品。

Meyer-Lavigneのフラワーポット。

Ana Kraš(アナ・クラシュ)のBONBON SHADE 380ランプ。

窓の向かいには巨大な絵画。作者は不明とのことですがインパクト大です。

絵画や小物、クッションの置き方まで絵になります。

暖炉を囲むエリア。クラシックなステンドグラスからスペーシーなVP グローブまで様々なテイストのものでコーディネートされている。

ハンス・J・ウェグナー、GE290。
ハンス・J・ウェグナー、GE290-3。

ヴァーナー・パントン、VP グローブ。

Bjorn Wiinblad(ビヨン・ヴィンブラッド)のフラワーポット。

暖炉エリアの向かいの窓際スペース。たくさんのアート作品や小物が空間に彩りを与えている。

イルム・ヴィッケルソーのロッキングチェア。

Jo Hammerborg(ヨー・ハーマボー)のOrient(オリエント)。目線よりも低めに配置。

建てられた当時からのステンドグラス。

配置が美しい。

Lars Ejler SchiølerのランプOrigami。

階段を上がって二階にお邪魔します。

ルイスポールセンph4/3。
窓際の植物・小物は定番。

現地で買付の際に、チークの家具にペンキを塗ったものを見かけますが、こういったアクセントで使うのだとなんだか腑に落ちました。

5人家族のKarenさん。長女さんのお部屋ものぞかせていただきました。生活感はありながらも雑然としておらず、すっきりしています。

寝室にお邪魔させていただきました。

本を重ねて小物を飾る方法は、デンマーク現地でもよく見かけます。洋書を重ねるなどして気軽に取り入れやすいインテリアです。

長男さんのお部屋。ヴィンテージ家具は使われていませんが、デンマークのセンスを感じるすっきりとした清潔感のあるお部屋です。

先にも説明した通り、元々住み込みの使用人を雇う前提で設計された邸宅のため、使用人専用の階段が存在していて、住人のプライベートエリアに入れないようになっていたとのこと。

階段の踊り場のアート作品。

地下室へお邪魔します。倉庫として設計されたようですが、奥へ進むと、

黄色いタイルがかわいい。

バースペース。テーブルの天板を取り除くとビリヤード台が現れます。

フラワーアーティストのKarenさん。取材へのご協力ありがとうございました。Thank you so much!

今回はじめてお伺いし初対面となりましたが、丁寧に家中をルームツアーしてくださり終始感動しっぱなしの取材となりました。すべてが美しく、均整の取れたコーディネート、絵画や小物のセレクトセンス、その配置。どこを切り取っても参考にしたくなる美しいコーディネートでした。 私自身も含め、北欧ヴィンテージで揃えようとするとどうしてもチーク材一辺倒になりがちですが、様々なテイストをミックスしたスタイルや、真っ赤なエイトチェアのような大胆なコーディネートも取り入れてみることをお勧めしたくなるほど、印象的な光景でしたまた、日が当たる窓際に小物を飾ることによりガラス小物が引き立ったり、陰影の美しさが際立ったり、時間によって見え方が変わるという点も取り入れやすいのではないでしょうか。たくさんの心地よい暮らしのヒントを学べた貴重な機会となりました。Karenさんありがとうございました。

 

北欧家具tanuki 北島

 

 

 

 

このカゴはいったい?ソーイングワゴンの使い方とその魅力とは?

当店で買い付ける北欧ヴィンテージ家具。チェアやソファなど家具としては定番のジャンルからその国独特のデザインのものまでさまざまな種類が存在します。その中でも日本ではあまり馴染みのない家具のジャンルがソーイングワゴン。籐で作られたカゴが付いているその見た目から、初見でどのように使うのか、どういう目的で作られたのか皆目見当つかないという方もいるはず。しかし、その見た目の可愛さや実用面で日本にはないジャンルながら当店でもとても人気の家具のひとつ。そんなソーイングワゴンの魅力をまとめます。

ハンス・J・ウェグナーのAT33。

ソーイングワゴンとは?

明確な定義はありませんが、当店では手芸用品を収納するためにデザインされたカゴ付きのテーブルやワゴンをソーイングワゴンとしています。基本的に籐や革などで作られた毛糸や手芸用品を収納するためのカゴが付いており、また引き出し内部に針やボビンなどを収納するための専用の作りになっているものもあります。また、移動が簡単にできるように脚のキャスターが付いているものや、作業スペースの為に天板が折り畳み式になっているものも存在します。そのカゴの見た目の可愛さや籐の民芸的な風合いから当店でも人気の北欧ヴィンテージ家具の中のひとつのジャンルです。

 

ソーイングワゴンの魅力とは?

そんなソーイングワゴンの魅力はどこにあるのかさらに詳しく見ていきます。

①カゴがかわいい

まず何と言ってもその特徴は「カゴ」。この丸みを帯びた形がなんともほっこりで癒しの存在です。百聞は一見に如かずまずはいろいろなパターンを見ていきましょう。

ヨハネス・アンダーセンのソーイングワゴン。丸みのあるカゴがかわいい。

Bertil FridhagenデザインBodafors社のソーイングワゴン。

ハスレヴ社のソーイングワゴン。
スウェーデン製のソーイングワゴン。すだれのようなカゴがかわいい。
ヨハネス・アンダーセンのソーイングワゴン。
特徴的な六角形のカゴ。
こちらのソーイングワゴンは布製のカゴ。

日本でも古来より竹ざるや籐細工などが身近に存在していたため、デンマーク製とはいえどこか懐かしい感じがしませんか?それもあってかすっと生活に溶け込んでくれます。

②小物の収納に便利

元々手芸用品を収納するためにデザインされたソーイングワゴンなので、小物の収納に大変便利です。カゴは毛糸や編み物道具を収納していたと思われますが、現代ではテレビのリモコンやブランケット、身の回りのちょっと片づけたいものなどささっと収納できます。カゴは簡単に引き出せて開口部も広いので物の出し入れに使いやすいデザインです。

 

細かい仕切りがあると、小物の収納に便利。

③キャスター付きで移動ができる

多くのソーイングワゴンは移動がしやすいようにキャスターが付いています。小物を収納して重くなった場合でも、キャスターがあると移動がラクチン。ちょっとソファ横に移動したい時など、床を引きずることなく動かせるので大変便利です。

※番外編コーヒーテーブルとソーイングワゴンのハイブリット?

デンマークで買付をしているとほんとうにいろんな種類の家具に出会い、当時の人達の発想に驚くことも多いのですが、そういった中でもこのソーイングワゴンとコーヒーテーブルを合体させたこちらは機能てんこ盛りで今でもよく覚えている一品。こういった変わり種も存在しています。

ソーイングワゴンの最高峰とは?

これまでさまざまなソーイングワゴンを買付してきましたが、その中でも最高峰の一品といえるのがハンス・J・ウェグナーのソーイングワゴンAT33。天板を広げると約120cmまで大きくなるサイズ感に加え、天板や棚板、カゴを引っ掛けるパーツ迄無垢材を使用、内部の仕切りも細かく、手芸用品の収納に大変使いやすい仕様になっています。その造りの良さやデザイン、希少価値からもソーイングワゴンの最高峰といえるでしょう。


元々手芸用品の収納としてデザインされたソーイングワゴンですが、カゴの可愛さに加え現代の生活においてもその実用的な面でたいへん重宝する一品。民芸的な要素はお部屋にほっこり感を与え、これぞ北欧の雰囲気というヒュッゲな空間を楽しめます。当店では常時様々なソーイングワゴンを取り扱っております。お探しの際は当店までお問い合わせください。

メンテナンス済みのソーイングワゴンはこちらから

メンテナンス前のソーイングワゴンはこちらから

北欧家具tanuki 北島

外交官の為のチェア?フィン・ユールのディプロマットチェアの魅力

当店で買い付けるデンマークのヴィンテージ家具達。今回はフィン・ユールのディプロマットチェアをご紹介いたします。通常のチェアよりやや大き目のサイズとなり、ダイニングチェアというよりもデスクワーク向きのチェアとなりますが、その座り心地やフィン・ユールの作品としてはお買い得な価格感が魅力の一脚です。詳しく見ていきましょう。


フィン・ユール(Finn Juhl)とは?

フィン・ユール(Finn Juhl)は1912年デンマークに生まれ、コペンハーゲンの王立デンマークアカデミーで建築を学びます。卒業後、デンマークを代表するモダニズム建築家ヴィルヘルム・ラウリッツェンの事務所で10年間働き、1945年に独立。インテリアと家具のデザインを専門とする事務所を設立します。彫刻家のような発想でデザインフォルムを生み出し、技術的にも時代の先端を行く家具を多く発表しました。 ユールのキャリアは、毎年開催されるコペンハーゲン家具職人組合の展覧会への参加によって開花されます。この展覧会は、若手建築家と伝統的な家具職人とのコラボレーションを通じて、デザインの革新を支援する国のイベントでした。職人であるニールス・ヴォッダーとのパートナーシップで大きな成功を収め、「ペリカンチェア」や「チーフテンチェア」など、数々の重要な作品を制作した。


ディプロマットチェアとは?

1961~62年にデザイン、France & Sonより製造されたフィン・ユールのアームチェア。型番はNo.901。三次元的で有機的な美しい曲線が特徴的なフィン・ユールの初期のデザインとは異なり、機械による量産性を考慮し二次元的な曲面を採用しデザインされたチェア。直線的な造形ではあるが肘の前後や所々にフィン・ユールらしいデザインが垣間見れる。ディプロマット(外交官)の名の通り、各国のデンマーク大使館で使用され、当時ディプロマットデスクなど一連の商品と組み合わせベストセラーとなった。当店で現地で買付を行う際も、比較的まとまった数が見つかることが多く、相場が全般的に高いフィン・ユールの作品としては比較的手に入りやすい作品である。市場でよくみられるタイプとは異なりハイバックタイプも存在する。


フィン・ユールのディプロマットチェアの魅力とは?

フィン・ユールのディプロマットチェアの魅力は下記にまとめられます。

①ゆったりとした座り心地

②背もたれがしなる

③アーム裏の掻き込み

④座面の浮遊感

詳しく見ていきましょう。

 

①ゆったりとした座り心地

まずその魅力はゆったりとした座り心地。チェアの幅は69cmと一人掛けのソファくらいの大きさで、アーム間は54.5cmとダイニングチェアがすっぽり収まってしまうくらいの大きさ。また、座面と背もたれはの内部は中空のフレームに金属のバネを張った構造をしているので、底辺り感がなく心地よい座り心地となっています。腰の部分が程よく盛り上がっているので腰をサポートして姿勢正しく腰掛けられます。窮屈になることなく、長時間座ることに適しているので、デスクワークや商談スペースに最適です。

②背もたれがしなる

フィン・ユールのディプロマットチェアの背もたれはサイドのフレームに固定されておらず、表から見えないのですが背と座が金属のL字パーツで繋がっており、凭れかかるとしなります。見た目のデザインがすっきりしつつも機能的な面はさすがフィン・ユールです。

背もたれとサイドのアームとの間に隙間があることですっきりとした印象になっている。

③アーム裏の掻き込み

有機的で曲線的なアームレストを多くデザインしたフィン・ユールの作品としては直線的なアームのデザインとなっていますが、フィン・ユールらしい造形はもちろんあります。その一つがこのアームレスト裏の掻き込み。表からは見えにくいのですが、アームを手で持った時に収まりが良いようになっており、ついついアームを握りたくなる造形です。また、アーム先端は少し出っ張っているデザインになっており、こちらも手にとてもよく馴染みます。

アーム先端は造形だけでなく杢目も美しい。

④座面の浮遊感

側面から見ると座面が浮いているように見える。

多くのフィン・ユールのチェアに共通する特徴をこちらのディプロマットチェアも備えています。それが座面の浮遊感。フレームから座面に掛けてスペーサーを挟むことで、座面が浮いているように見えます。このことで大き目なチェアながら、軽い印象を与えてくれます。

座面と座枠の間に真鍮製のスペーサーを挟み込み浮遊感を演出。長方形状に段差を付けた座枠の陰影により高級感を感じる。

フィン・ユールのディプロマットチェアは、広い座面やしなる背もたれなど快適に長時間座ることができる実用性と、座面の浮遊感やアームの造形などフィン・ユールらしいデザインも楽しむことができるチェアです。当時ベストセラーとなったこともあり、ヴィンテージ市場においてある程度流通量があるため、他のフィン・ユールの作品よりも安価に手に入れられる作品ですが、年々希少性は増してきており価格も上がってきております。外交官の為にデザインされたと聞くと座るだけでなんだか気分も上がりませんか?デスクワークなどの個人利用から商談スペースまでさまざまな場面で活躍するフィン・ユールのディプロマットチェア、お探しの方やご検討の方はぜひ一度当店までご相談ください。現地から直接買い付けご案内させていただきます。

 

北欧家具tanuki 北島

小振りで収まりのよい掛け心地が魅力。カイ・クリスチャンセンのNV31を選ぶ理由

当店で取り扱う北欧ヴィンテージのチェア達。普段の生活で長く使うものだからしっくりくるものを使いたいところですが、有名デザイナーから無名のものまで数えきれないくらい種類があるので、チェア選びはなかなか悩みどころのひとつですよね。当店でもこれまでたくさんのチェアを買い付けて参りましたが、そんなチェア選びのご参考に今回はカイ・クリスチャンセンのNV31をご紹介します。

カイ・クリスチャンセンとは?

カイ・クリスチャンセン(Kai Kristiansen)は1929年にデンマークで生まれた家具デザイナーです。1948年頃、コペンハーゲンにある王立美術アカデミーに入学し、家具デザイン界の巨匠であるコーア・クリント(Kaare Klint)に師事します。その後わずか26歳で自身のスタジオを開いたクリスチャンセンは、やがてデンマーク・モダンスタイルと呼ばれるようになる家具を作り始め、後にデンマークの著名なメーカーで生産されることになります。
クリスチャンセンは、チーク材とローズウッド材の接合を得意とし、チェア、デスク、サイドボード、ウォールユニットなど、デンマークモダンを代表する家具を製作しており、そのデザインは時代を超えた今でも高い評価を得ています。

NV31とは?

1956年にSchou Andersen Møbelfabrik社よりカイ・クリスチャンセンデザインで発表されたモデル。現在では宮崎椅子から復刻しHANDYというモデルで生産がされています。当店の経験上、ヴィンテージのモデルでは、チーク材、アフリカンチーク材、ローズウッド材が存在し、小振りなサイズ感と座り心地の良さで当店でも人気の定番チェアのひとつです。


カイ・クリスチャンセンのNV31のおすすめポイント

NV31のおすすめポイントは下記にまとめられます。

①背中を包み込んでくれるようなフィット感

②ハーフアーム的な使い方ができる

③内向きの脚の後ろ姿

④バイカラーの張替も楽しい

詳しく見ていきましょう。

 

①背中を包み込んでくれるようなフィット

まずNV31の魅力は座り心地の良さです。見た目からもわかる通り背もたれが半円のような形になっていて、背中にやさしくしっくりとフィットします。デンマークのチェアとしては小ぶりなサイズ感なので、日本人の体格にもぴったり。背もたれの位置も腰をサポートしてくれるような位置なので長時間座っても疲れにくいです。

②ハーフアーム的な使い方ができる

NV31の背もたれは肘が少し掛かるくらいの位置にデザインされているので、アームチェア的な使い方も可能。もちろん腕全体をサポートしてくれるアームチェアとは使い勝手は異なりますが、少し引っ掛かるだけでも腕馴染み感が格段によくなります。アームチェアだとテーブルに収まらない、だけどアームチェアの機能性も捨てがたい、という場合には特におすすめなチェアです。

③内向きの脚の後ろ姿

NV31は後ろ姿も美しいチェア。その要因の一つはこの内向きの脚ではないでしょうか。ただ単にまっすぐに下ろすのではなく内向きにすることですっきりとした印象になり、且つ椅子を引くときに足に当たりにくくなるという実用性も考慮されています。また、フレームに三角形を作るいわゆるトラス構造をしているので、脚間に貫を作ることなく強度を保っているという点もポイント。美しさと実用性を兼ね備えたデザインです。

④バイカラーの張替も楽しい

NV31は背と座をそれぞれ張り替えますので、背と座を異なる生地で張り替えることも可能。自分だけのオリジナルの組み合わせを見つけて、世界に一脚だけの自分仕様のチェアを作る楽しみもあります。当店の定番はグレーとからし色の組み合わせ。背もたれのみミナペルホネンなどの柄ものを張ってもかわいいですね。


当店でも定番のカイ・クリスチャンセンのNV31。ヴィンテージのチェアとしては比較的市場での流通数は多く、買付で見つかる頻度も高いチェアですが、近年のヴィンテージ家具の相場上昇やコンディションのよい個体も減少してきているため、今後はより希少性も上がっていくでしょう。このモデルでお探しの場合は現行品のHANDYも選択肢のひとつですが、チーク材やローズウッド材などヴィンテージでしか流通の無いモデルをお探しの場合はぜひ当店までご相談ください。当店では買付から木部のメンテナンス、張替まで一貫して行い皆様にお届けしています。在庫がない場合も買付の際にお探し可能ですので、ご希望の場合はご遠慮なくお問い合わせくださいませ。

 

北欧家具tanuki 北島

【tanuki journal】No.14 “現地取材”名作家具と現代作家のコーディネート空間

北欧家具tanukiにて取り扱う北欧ヴィンテージ家具・雑貨達。今から50~70年前に作られた作品達は今もなお現代の生活を彩り豊かさや温かみを与えてくれます。当店で出会いを果たした家具・雑貨達が暮らしの中でどのように取り入れられているか、お客様宅を訪問・取材し心地よい暮らしのヒントを探る【tanuki journal】。

第十四弾はデンマーク現地の様子をお届けします。お伺いしたのはデンマーク最大級の家具ディーラーであるK氏宅。K氏の元で家具の買付後に十数年ぶりのご自宅に訪問させてもらいました。ゆったりとした広い空間に並ぶ名作家具や室内から望む眺望など贅沢な空間が広がっていました。


広々とした空間に名作家具が立ち並びます。

アルネ・ヤコブセンのスワンチェアにPH4 1/2-3 1/2 Glass Table。
象嵌が美しいサイドテーブル。
エリックバックのバースツールOD-61。
ホルムガード。こういった小物の配置も美しい。
ホルムガードのベースたち。

フィン・ユールのPOET。
向かいにはハンス・J・ウェグナーのピーコックチェア。

ピーコックチェアの隣を抜け隣の部屋へ。

歓談中、撮影失礼いたしました。

庭に突き出したお部屋からのこの眺め。なんとも贅沢です。デンマークでは一般的にカーテンを使用しませんが、カーテンのない窓は遮るものが少なくより室内と屋外が連なっているような一体感を感じます。

もう一度部屋に戻ります。

ハンス・J・ウェグナーRY25サイドボード。

Louis Poulse社、Poul HenningsenのPH Snowball。

現代の製品とロイヤルコペンハーゲンのベースの組み合わせも良いです。パステル調のドライフラワーとの雰囲気も◎。

奥の部屋に進み家族でゆったりくつろぐリビングエリアへ。それにしても広いです。

幾何学模様のパステル調の絨毯も良い雰囲気。

大きいカウチソファの影響で小さく見えますが、幅1.5mほどありそうな迫力ある絵画。
こちらの一人掛けは現代の木工作家GODSK SNEDKERIの作品MG31。
パステル調のドライフラワーの配色が絶妙。メタリックなキャンドルホルダもいい感じの雰囲気です。

象嵌が美しいサイドテーブル。

ストーブコーナーもスタイリッシュです。壁面へのオブジェの取り入れ方など参考になります。

この段差を作る点がグッド。


十数年以上の付き合いになるK氏の自宅には、北欧ヴィンテージ家具や雑貨と共に現代作家の作品も多数コーディネートされていました。パステルカラーのドライフラワーや絨毯などは空間によく馴染みつつ、良いアクセントとなっており参考にしたくなるコーディネートでした。夜の雰囲気も拝みたいと思いつつも、この時期は夜9時くらいまで明るいのでまたの機会としました。

余談ですが、今回は平日に伺いましたが、撮影の傍らK氏の旦那さんが夕方から夕食の準備をしていて、仕事を早く切り上げて家族との時間を大切にするさすがデンマークと肌に感じつつ撮影をしていました。もちろん日によるそうですが、それでも日本人の感覚からすると、やはり家での時間を大切にしている印象を受けました。撮影後はしばらくコーヒーを飲みながら雑談タイムとなり、デンマークと日本の働き方の違いやデンマーク人もデンマーク国内の税金や物価が高いと感じているなど、いろいろデンマークのリアルを肌で感じる取材となりました。K氏ありがとうございました。

 

北欧家具tanuki 北島