当店で買い付ける北欧ヴィンテージ家具。1950~70年代のいわゆるデンマークデザインの黄金期にデザインされた家具は今もなお造り続けられているもの、ヴィンテージでしか手に入れられないもの、近年復刻したものなどさまざまありますが、今回紹介するハンス・J・ウェグナーのCH-33は長らく生産が途絶えてたものの2012年に復刻し入手が可能となったモデル。近年容易に手に入れられるようになった反面、ヴィンテージのCH-33の希少価値は以前に増して高まっています。そんなヴィンテージのCH-33の魅力とは?現行品との違いとは?を解説します。
生涯500脚以上の椅子をデザイン、ハンス・J・ウェグナーとは。
ハンス・J・ウェグナー(Hans J Wegner)は1914年デンマークのトゥナーで靴職人の息子として生まれます。13歳の頃から家具職人H.F.スタルバーグの元で家具の修行を始め、17歳で家具職人の資格を取得しました。その後、コペンハーゲン美術工芸学校に入学し家具設計を専攻、卒業する1938年まで多くを学びました。卒業後、デンマークの建築家であるアルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)の事務所に勤務。ヤコブセンが設計したことで有名なオーフス市の市庁舎の設計にも携わり、議会の椅子や婚姻届を受け付ける部屋に置かれるチェアなど、そこに納める家具のデザインも行いました。1943年に独立し自身のデザイン事務所を開設。彼の代表作となるチャイナチェアシリーズの最初となる椅子はこの頃デザインされました。
ハンス・J・ウェグナーは、その後も数多く名作を残し、1951年にルニング賞を受賞、1997年に第8回国際デザイン賞を受賞するなど、数々の実績を残します。他にもデンマーク王立芸術アカデミーの名誉会員や英国王立美術大学から名誉学士号がハンス・J・ウェグナーに贈られています。1995年にはウェグナー美術館がウェグナーの生まれ故郷であるトゥナーに開館します。
生涯500脚以上の椅子をデザインしたと言われるハンス・J・ウェグナー。彼のデザインした作品は当時のデンマーク社会、住環境、経済状況などを反映し時代に即したデザインであると同時に、半世紀以上たってもなお古さを感じない普遍的なデザインが魅力であると言えます。
CH-33とは?
CH-33は1957年にハンス・J・ウェグナーとCarl hansen & Sonとの協業により生まれたモデル。”CH”とはメーカー名の”Carl hansen & Son”の頭文字から取っています。CH-33は1957年にデザインされ10年間ほどしか生産されていないため、ヴィンテージ市場での流通数は限られている希少なチェアの一種。そのハンス・J・ウェグナーのCH-33の魅力は下記にまとめられます。
①コンパクトなサイズ感
②末広がりの脚や背もたれのデザイン
③現行品にはないチーク材仕様
④腰の”いいところ”にフィット
⑤テーブル天板に引っ掛けられる(?)
①コンパクトなサイズ感
まずはそのサイズ感。サイズは幅55cm奥行47cm高さ72cm座面高44cmとハンス・J・ウェグナーのチェアとしては小ぶりな部類に入り日本人の体格にもぴったりです。デンマーク製の小さ目のチェアをお探しの方や女性にもおすすめの一脚です。
②末広がりの脚や背もたれのデザイン
次にそのデザイン。三日月のような形の横長の背もたれが特徴的で全体のシルエットはどの角度からみても美しく絵になります。背もたれはサイドに突き出ているので肘を少し引っ掛けることが可能で姿勢のバリエーションを増やせます。テーパーの掛かった前後の脚は安定感に寄与しながらスタイリッシュな印象。貫のデザインも特徴的で、どこを切り取ってみてもこだわりのデザインを感じます。
③現行品にはないチーク材仕様
現在生産されているCH-33には存在しないチーク材仕様はヴィンテージでしか手に入れられない希少なタイプ。チーク材ならではの木材の美しさや経年変化の雰囲気はやはり現行品にはない魅力。現行品でラインナップされているオーク材においても、やはり経年変化の風合いは現行品にはありません。
④腰の”いいところ”にフィット
こちらもこのチェアの特長の一つで、座面の背もたれの間隔が比較的狭く、腰の”いいところ”にフィットします。座面に深く腰掛けると姿勢を正してくれるような、腰のちょうど良いところをサポートしてくれるので、腰痛持ちの方にもおすすめ。
⑤テーブル天板に引っ掛けられる(?)
これを意図してデザインされているかどうかは定かではありませんが、背もたれをテーブル天板に引っ掛けることができるので、掃除の時に便利です。天板の高さによっては脚が宙に浮きませんが、高さ71cm以上であれば浮きます。
CH-33の現行品とヴィンテージの違いやそれぞれの魅力は?
CH-33の現行品とヴィンテージ、どちらを選ぶか迷いどころですよね。それぞれの魅力は何でしょうか。下記項目ごとに見ていきます。
①材の違い
②価格
③耐久性
①材の違い
現行品では【ウォールナット材】【ビーチ材】【オーク材】の3種類が生産されていますが、ヴィンテージでは【チーク材】【チーク材×オーク材】【オーク材】に加え【ペイントもの】が存在したようで、座面がチーク材の突板仕様の希少性の高い仕様も存在しています。このブログを執筆時点で幸運にも4種類のCH-33のストックがあるのでヴィンテージ仕様のCH-33を見比べてみましょう。
①チーク材座面突板仕様
最も希少な仕様の座面がチーク材の突板仕様のタイプ。元々希少なCH-33の中でもさらに希少なタイプで座面の木栓もよいアクセント。軽量で取り回しもしやすいです。
②チーク材仕様
座面は布張りで他のフレームがチーク材の仕様。
③チーク材×オーク材仕様
背もたれはチーク材、他のフレームはオーク材という仕様。バイカラーがかわいいです。
④オーク材仕様
すべてのフレームがオーク材の仕様。ナチュラルな雰囲気が魅力。
②価格
現行品はブログ執筆時点でおおよそ11~15万円、これを考慮しますとヴィンテージ品の方が相場は高くなります。もう作られることがなく市場の流通量も限られるため今後ヴィンテージ品の価格は下がることはないと思われます。
③耐久性
現代の技術で生産された現行品のCH-33の耐久性は当然ヴィンテージ品よりも高いと言えますが、ヴィンテージ品でもしっかりメンテナンスされていれば実用上は問題ありません。とはいえ、ヴィンテージ品は作られてから半世紀以上経過しているので、今後問題なくメンテナンスフリーで使い続けたい点を優先したい場合は現行品を選んでもよいでしょう。
上記で各項目ごとに現行品とヴィンテージ品の違いについて解説しましたが現行品とヴィンテージどちらを選ぶべきかで悩んだら、、、
価格優先で今後もトラブルなく長く使いたいという方→現行品がおすすめ
チーク材仕様を入手したい、経年変化の風合いや手入れをしながら長く使いたいという方→ヴィンテージ品がおすすめ
ハンス・J・ウェグナーのCH-33は、1957年にデザインされ、コンパクトなサイズ感と美しいデザイン性を兼ね備えた名作です。2012年の復刻により現行品として再び入手可能となりましたが、ヴィンテージ品の希少価値は一層高まっています。価格面と耐久性を重視しメンテナンスフリーで長く使いたい方は現行品がおすすめですが、ヴィンテージ品は現行品では手に入らないチーク材仕様や、時を経た独特の風合いを楽しむことができます。チーク材の質感や経年変化を楽しみながら、愛着を持って手入れをしていきたい方には、ヴィンテージ品がぴったりでしょう。どちらを選ぶにしても、デンマークデザインの黄金期を代表する名作として、長く愛用できる一脚となることは間違いありません。
当店ではハンス・J・ウェグナーのCH-33を始め多数の作品を取り扱っています。お探しの商品がございましたらお気軽にお問合せくださいませ。
北欧家具tanuki 北島