【tanuki journal】No.2 出会いや受け継ぐことを大切にされるご夫妻の心地よい空間

北欧家具tanukiにて取り扱う北欧ヴィンテージ家具・雑貨達。今から50~70年前に作られた作品達は今もなお現代の生活を彩り豊かさや温かみを与えてくれます。当店で出会いを果たした家具・雑貨達が暮らしの中でどのように取り入れられているか、お客様宅を訪問・取材し心地よい暮らしのヒントを探る【tanuki journal】。

第二弾はHさんご夫妻を訪ねました。北欧ヴィンテージとの出会いから日本刀まで話題に富んだ取材となりましたが、古来の日本と北欧の室内空間における共通点を考察する思慮深い取材となりました。


-今お住いのお家はどのように決められましたか?

Hさん(奥様):こちらの部屋はもともと私が子供の頃に住んでいたことがあって、その後に人に貸し出されたこともあったのですが、紆余曲折あり今また住んでいます。見晴らしがよく遮るものがないので、富士山も見える景色が気に入っています。

-北欧ヴィンテージ家具を知ったきっかけはなんですか?

Hさん(旦那様):最初のきっかけは、自宅の近くのお店でたまたまこのコーディアルのC&Sを見つけたことです。その時はアラビアのカップなどもありましたが、一つだけこのコーディアルが置いてあって、初見で気に入って購入しました。そのお店は趣味で集めたものをちょこちょこ出しているようなお店でしたので、ほんとうに偶然の出会いでした。そこからいろいろ調べていく中でクイストゴーというデザイナーに興味を持ち、レリーフやアズールなどのシリーズがあることを知って、雑貨を探し始めました。

イェンス・H・クィストゴーのコーディアルシリーズのC&S。
イェンス・H・クィストゴーのアズールやレリーフ、ルーンシリーズ。
BIRDS’ WORDSのセラミックプレート。

Hさん(旦那様):その後、旅行先でも北欧雑貨を集めているお店に行ったりして少しずつ買い集めていきました。その時もお店に展示してある家具を見て、北欧の家具もあるんだねというくらいでしたが、自宅近くにtanukiさんがあることをネットで知って、家具を見に行ったというのが始まりです。

 

-最初に購入した家具は覚えていますか?

Hさん(旦那様):こちらのサイドチェストですね。一目ぼれで購入しました。

籐の棚がかわいいサイドチェスト。

-籐の棚がかわいいですよね。家具を購入するに当たって選ぶ基準や重視したことはありますか?

Hさん(旦那様):あんまりこれを買おうと思ってお店に行ってはいません。実際に見てこれいいかもとか、今日それ買うつもりじゃなかったのにとかはよくあって、出会いを大切にしています。このコーヒーテーブルもそうですね。別のコーヒーテーブルが気になってお店に伺ったら、たまたま目に入ったこちらのコーヒーテーブルを、おっいいねと思って購入しました。自宅に置いてみると、とてもよかったです。籐の入っている最初に購入したチェストとも相性がよく、気に入っています。

カート・ウストヴィのコーヒーテーブル。脚のデザインがかわいい。

Hさん(旦那様):こちらのケアスゴーのチェストもテレビボードを探していて、たまたま調べていたらあの脚のデザインがいい感じだねと、そこからミラーのことも知って購入しました。

アクセル・ケアスゴーのチェスト。テレビが重いため、チェストに直置きしないように工夫して設置されています。

-出会いを大切にされているのですね。

Hさん(旦那様):先日購入したミニベアもちょうどよい買い時だったかなと。5年後だったらもう見つからないかもしれないですよね。

Hさん(奥様):一生使うなら、早い時期に買った方が使える年数が長いから、その方がいいんじゃないかと思っています。

Hさん(旦那様):その考えは二人とも共通していて、定年退職してから買うとかですと、使える年数も短いですし。一生使えるので、長く使うことを考えるとよい買い物かと思います。具合が悪くなったらアフターフォローもしていただけるし、そうやって大事に使えるのもよいですね。

ハンス・J・ウェグナーのミニベアAP20にオットマンAP29を使用。

Hさん(奥様):これまで大切に使われてきたものを使わせてもらうって、素敵ですよね。

Hさん(旦那様):新品で購入するという考えはあまりなくて、木材の経年変化の雰囲気とか温もりとかもそうなのですが、もともとアンティークとかヴィンテージとか古いものが好きな方なのだと思います。習い事の居合道の関係で日本刀を持っているのですが、

Hさん(奥様):それアンティークどころの騒ぎじゃない笑。

Hさん(旦那様):室町時代のものとか、それこそ500年とか600年前のものもあったり。

Hさん(奥様):それを一時預かりしているという感覚なんですよね。今の時代に。

Hさん(旦那様):古美術商の人が言っていたのですが、自分で終わらせるんじゃなくて、その期間だけ預かって次の方に伝えていくものなんですよと、こういうヴィンテージ家具もそういった感覚に近いですよね。

-素敵な考え方ですね。

Hさん(旦那様):それが例えば他人でなくて、家族だったり子供とか孫とかに受け継いでもらって大切にしてもらえると、ものを大事にするという教育にもつながっていくと思います。長く使うとか、すぐにものを買い替えないとか。値段は今の時点では高いかもしれませんが、50年100年の単位で使うことを考えれば。祖母がそういう考えで、いいものを長く使いなさいということを教えられました。長く使うと愛着も湧くし、傷が付いても思い出とか歴史になるじゃないですか。北欧ヴィンテージに惹かれるのは、そういうところもあるのかなと思います。

Hさん(奥様):日本刀だけではなく、お着物とか袴とかも以前に誰々先生が使っていたものを譲っていただいたり。

Hさん(旦那様):着物は縫い代に余裕を持たせて仕立て直せるので、祖父が着ていた羽織などを私が着ていたり。それもヴィンテージですよね。

Hさん(奥様):先生方や家族の想いが詰まった、特別なものです。

-デンマークの家具を受け継ぐとか引き継ぐとかの考えにも共通しますね。

旅先で見つけたリサ・ラーソンの陶板。

Hさん(奥様):このほかにも引き継いだものがいろいろあって、例えばちょっとかわいそうな感じになっているんですが笑、玄関の絨毯も実は祖父が勘違いしてお風呂マットで使ってしまっていたものを使用していたり、カリモクのビューローも祖父が使っていたものを譲ってもらったり。生前よくここで俳句をノートに書いていました。

-北欧ヴィンテージ家具に限らずたくさんのものを受け継いでいらっしゃるのですね。

カリモクのビューロー。

Hさん(奥様):照明のあり方も古来からの日本の感覚と共通するものがあると思っています。日本における金箔の使い方とか一見ぴかっと派手に見えますが、薄暗い中にあるからこそ美があるというか。

貸していただきました書籍。古来の日本家屋には陰影の美学があり、薄暗がりと屏風や漆器、砂壁などの身の回りのものとの関係は北欧の文化と通ずるところがありそうです。深い考察に感服です。
こちらも今回お届けしたランプ。お借りした書籍を読んだあとだとこの何気なく見ていた真鍮色も何か薄暗がりとの関係を考察してしまいます。照明ではあるもののむしろ点灯していない自然光の中でのあり方をも考えた配色なのか。

Hさん(旦那様):いまでこそ蛍光灯で暗いところをなくせるようになっていますが、そもそも暗がりとか影がいっしょにあるという日本家屋の感覚は北欧の考え方に近いように思います。似たような感覚を日本人はもともと持ち合わせていたのではないかと。そのような背景があるので、北欧ヴィンテージ家具とも相性がよいと思うし、木の文化ということもあるし、逆にノスタルジックというかなつかしさも感じる部分はそういうところにあるのかなと思います。

Hさん(奥様):まったく異国のものが入ってきている感じはないよね。暮らしの中にしっくり入ってきてくれる感覚。

Hさん(旦那様):素朴感というか、無駄に派手じゃなくて長く丈夫に使える。

Hさん(奥様):工業製品ぽくなく、手仕事感があったり。

-確かに日本の感覚と文化的に近い部分があったからこそ馴染みやすいという点もありそうですね。

Hさん(旦那様):手仕事感といえば、こちらのガレコレクションの作品も集めていた時期があって、これもその職人さんによって葉っぱ一筋の描き方から異なるのが面白いと思っています。こだわっているポイントが職人さんごとに違うようで、青木蓮とか藤の花とか結構個性があって。

-出会いを大切にされているので特にお気に入りのものという感覚はあまりなさそうでしょうか。

Hさん(旦那様):そうですね、例えば食事の時はカイ・クリスチャンセンのNo.42に座るし、ミニベアにも座るしミラーも使うし、その時々で一番は変わります。この中でどれを残すかを聞かれると困りますね。出会って気に入って買っているので、一生使い続けるつもりです。生きている間、ずっとそばにあるんだろうなと思っています。

カイ・クリスチャンセンのNo.42。
アクセル・ケアスゴーのミラーとチェストをセットで使用。

Hさん(奥様):旅先で購入するものもあるので、思い出もあったりして。

Hさん(旦那様):それこそこのシュガーポットのシリーズは集める気もなかったのですが、旅先で見てあっこれかわいいねとなって、いつのまにか集め始めました。

小物や雑貨から集め始めたことを考えると、今回のGE375とかミニベアとかは清水の舞台から飛び降りる感じはありますね笑。GE375もたまたまお店にあって座ってみたら、おおっという感じで気に入って。もちろんその時にお金がなかったら買えないし、よいタイミングで出会えたのかなと思います。GE375と出会ってちゃんとウェグナーについて調べ始めて、いろいろ調べる中でGEシリーズなどを知ることができたり、そうやって広がっていくのも楽しいですよね。

今回の訪問でお届けさせていただいたハンス・J・ウェグナーのGE375とアクセル・ケアスゴーのオットマン。
こちらもお届けさせていただきましたハンス・J・ウェグナーのGE375用オットマン。

Hさん(奥様):お家が気持ちいい場所って、一番いいよね。

Hさん(旦那様):ただ寝に帰る場所ではなく、ちゃんとこう生活していく空間というか。食事の空間、くつろぐ空間とそれぞれのところに使いたいものがあると行きたくなるというか、そういうのもいいですよね。

-北欧ヴィンテージ家具を使用する上で気を付けているところはありますか?

Hさん(旦那様):先にここに気を付けてねというポイントを聞いているので、例えばコーヒーテーブルの上になにか置くときには敷物を敷くなど、一工夫はしています。また、なにかこぼした時にはすぐにふき取ることも意識しています。ただ、それでも染みやへこみなどができてしまったときには、それも含めて味かなとも思っています。前の持ち主さんが付けた跡が残っていることもありますが、それはその子の歴史だからそれはそれでいいかなと。

コーヒーいただきました。ありがとうございました。

このほかにも紫外線が当たらないようにカーテンは紫外線99%カットのものにしましたし、例えばお風呂場やガンガン使うところには北欧ヴィンテージ家具を使用しないなど、状況や環境に応じて使い分けています。

Hさん(奥様):大事にしたいところにはいいものを置きたいよね。気に入ったものに囲まれて生活するのは、ほんとうに幸せなことですよね。


さまざまなものを受け継がれて大切にされているHさんご夫妻。成り立ちや歴史、文化的背景は異なれど北欧と日本の室内空間における共通点への考察などたいへん造詣が深く、はっとさせられました。また”一時預かりをしている感覚”というお言葉は”引き継ぐ”よりも長い時間軸でものに向き合われているのだとその姿勢に感銘を受けました。そのような想いのもと当店の家具をお選びいただけたこと家具屋冥利に尽きます。この度も当店のご利用誠にありがとうございました。今後とも引き続きよろしくお願い致します。

北欧家具tanuki 北島

 

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